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  • 2012.10.01 Monday
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『青青の時代 全4巻』山岸凉子

(希望コミックス/潮出版社)

先日、友達に山岸凉子の漫画をたくさん貸してもらった。この『青青の時代』もその中のひとつ。

山岸凉子の描くすらりとした美形の人物は、たいてい「酷薄」という言葉が似合う恐ろしさをまとっているように思う。この作品に出てくるヒミコもそうだ。でも、ただ恐ろしいばかりではなくて、少し同情できるような、理解できるような気もする。普通でない力を持っているというのは、本人にとっても大変なことなのだろうから(世間知に長けているのならなおさら)。本当は、聞こえさまになどならなかった方が良かったのかもしれない。イヨのように。やはりヒルメのような人こそが、ああいう役につくのに向くのじゃないかしら(シャーマンとしてしか生きられないだろうし)。

最終巻に収録されている『牧神の午後』も、特別な才能を持つことについて描かれていて、通じる内容だな、と思った。ヒルメとニジンスキーはよく似ている。

さて、『青青の時代』のラスト、イヨがシビと共に島に帰るのが、なぜなのか最初はよくわからなかった。帰ったら、また島民からつらい仕打ちを受けるんじゃないか、と思ったからだ。でも、それでも、クロヲトコの仕事を手伝いたかったのだろうな。死者の弔いをする人がいない島には、したくなかったのじゃないかな、と思う。物語では主要人物が次々に死んでしまって、死んでしまえば権力も何もむなしいものだなんて無常を感じたりもするのだけど、逆に、死ねば皆同じになると思えば、それは救いのような気もするのだった。

それにしても、大和言葉というのか古語というのか、古代の日本語には興味を惹かれるものがあるなぁ。

『愛するお兄さん』宮下キツネ

(Cult comics X-kids Selection/笠倉出版社)

6篇収録のBL短編集。ネコミミ2篇、メガネ1篇、スーツ1篇。
今気づいたけど、よく見たら物凄い表紙イラスト…。お尻丸出しじゃないですか! 帯でも隠れてないですよ!

概ね可愛い受けで、ストーリーは設定のワン・アイディアで強引に持っていくご都合展開。エロ少なめのエロ漫画みたいな感じ……簡潔にまとめるとそういうことになっちゃうんだけど、別に貶しているわけではなくて、私は楽しんで読みました。宮下キツネの描く美少年受けが好きだし、頭の悪いキャラクターや展開も、バカバカしくも可愛い。

表紙イラストにも採用されている『慟哭に似た恋模様』が特に気に入った。獣耳と尻尾を持った亜人種族が、人間達に低賃金で奴隷のように使われている世界。あるお屋敷に使用人として雇われているネコミミ人種族の美夜は、お屋敷のお坊ちゃんと恋仲になっているのだけど…という話。まず、美夜が可愛い! これに尽きる…と言ってしまっては後が続かないんだけど、“美少女のような受け”はこの作者の持ち味であって、こちらとしても期待して読み始めるので、期待通りの内容に満足した。ちょっと頭の弱いネコミミ少年が、潤んだ目で「お慕いしています」なんつって縋ってくれるんだよー。何と言うか、支配欲みたいなものがくすぐられて堪らない。設定はわりとシビアなのに、ラブラブバカップルで能天気な雰囲気なのも良かった。

他の作品も最終的にバカップルエンドで幸せな1冊でした。あとは、作品ごとに絵にバラつきが結構あるのが多少気になった。ただ、絵柄自体がどうこうってわけじゃなくて、ツールの違いが出てるのかなぁ?とも思う。自分自身は絵を描かないので、技術的なことは全然わからないんだけど。

『慟哭に似た恋模様』の、獣耳の人達が奴隷のように使われている設定と、『ノラ猫印の宅配便』の、ネコミミ帽子が制服の運送屋という設定は、面白かったので、また同じ設定で描いてほしいな。(はっ、これでは単なるネコミミ好き!?)

『晴れた空にくじら3 浮鯨のいる空で』大西科学

(GA文庫/ソフトバンククリエイティブ)

浮鯨のいる世界で、戦争に巻き込まれていく浮船乗り達のシリーズ最終巻。

序章の「浮鯨」からググッと持っていかれた。大西科学の描く滅びの情景は、哀しく、穏やかで、うつくしい。この達観した感じ、全体に漂う冷静さが、心地良い。

本編は、いままでよりシリアスな雰囲気だったかな。雪平も格好良く見えた…時々(笑) 実際の戦争からかなりネタをとっているみたいだけど、自分がその手の知識が全くないのが残念だ。元ネタがわかっていればもっと楽しんで読めるのに…。でも、その辺りの知識はなくても、問題なく面白く読めたけれども。特に峰越とヴァローナとの1対1の決戦は読み応えがあった。この辺りは、理屈っぽい作風が良い方に働いていて、非常に緊迫感がある(個人的には、大西科学の理屈っぽさを元々愛しているけれども)。いや、もう、途中からドミトリィエフ少尉に萌えながら読んでたので、彼が倒れたときにはすごくショックで、クニちゃんが頑張っている間も、正直言って少尉のことが気になって仕方なかった。

ああ、この作品は本当に映像で見てみたいなぁ。作中の文章を忠実に表したデザインで。植物のような浮鯨達、ガタイの良い浮船乗りの青年達、可憐な、けれど凄腕の浮鯨撃ちの少女。青い空の、ずっとずっと高いところにいる浮鯨達と、ずっとずっと低いところで火花を散らしている人間達との、対比というか、スケールの違いが、鮮やかに浮かび上がるだろうなぁ。

これで『晴れた空にくじら』シリーズは終わっちゃったけど、大西科学の新作を楽しみに待つことにしよう。ラノベももちろん良いのだけど、一般向けで何か書いても面白いんじゃないかなー。


◆『晴れた空にくじら 浮船乗りと少女』の感想はこちら

2009年10月の購入予定

予定は未定。必ず買うとは限らないけど多分買うであろう漫画のリストです。
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『さよならキャラバン』草間さかえ

(flowersフラワーコミックスα/小学館)

人気BL漫画家・草間さかえ初の少女漫画単行本。ああ、上手い作家は何描いても上手いな! 読んでる間中ゾクゾクしっぱなしだった。個人的な好みを言えば、むしろBL作品より少女漫画作品の方が好きなくらいかも。いや、もちろん草間さかえのBL漫画は上手いし好きなんだけど、BLって「上手さ」以上に、自分の萌えツボにどれだけハマるかっていう読み方になるので、その点で草間作品はドンピシャとは言い難くて。少女漫画の方が純粋に作品世界に浸ることができるように感じた。

比良坂町の原田時計店という時計屋さんを中心としたシリーズ(連作短編)5篇と、その他に読み切り短編が4篇。シリーズの方は、時計屋の主人とその飼い猫と近所の子供達が主なキャラクターで、少し不思議な話。読み切りはいずれも恋愛絡みの話。

総じて眼鏡男子と猫に対する作者の愛を感じる1冊だった。あと、読み切り作品においてはどの作品も女の子のキャラクターが良かった。純真で可愛らしく、その上したたかさや頼もしさも持ち合わせていて、女性読者から見ても嫌味なく魅力的に映るのではないかしら。逆に男の子(男性)キャラはヘタレ系で、これはこれで可愛らしかった。実際、このバランスはリアルかも。いざとなったら女の子は強いのだ! 時計店シリーズの方でも、結果的には主人の母親が最強だものなぁ(形はどうであれ、彼女の言葉が息子を生き長らえさせているわけだし)。途中までは恐ろしげな化け猫の風情を漂わせていた黒猫が、あんなに律儀なヤツだというオチは、なんとも可笑しくって良かった。こういうところに猫愛を感じるね。

1篇1篇を読む間、至福の時間を過ごさせてもらった。作者にはこれからもぜひ幅広く活躍してほしいなぁ、と思う。

『息子がお世話になってます!』天城れの

(ビーボーイコミックス/リブレ出版)

表題シリーズ3話プラス描き下ろし番外編2話、他に読み切り短編を2篇収録のBL作品集。

表題シリーズにたいそう萌え&ウケました。幼稚園の先生×園児の父親なんだけど、このお父さんが可愛くって! 超エリートサラリーマンで「世の中全てが劣って見える…」なんて素で思ってる歪んだ高慢チキ野郎なんだけど、エリート意識の陰に寂しさを抱え込んでいるのが良い。自分なりに愛情を注いでいるのに息子が懐いてくれなくて悩む姿とか…良い!

そもそも私は父親BLが大好物! オヤジBL自体好きなんだけど、中でも子持ちオヤジは最高に好き! 特に、幼い息子か年頃の娘がいる設定だと良い。幼い息子なら、オヤジに加えてショタ好みの私の心を満たせるし、単純に幼児の可愛さに癒されるし。年頃の娘なら、娘にどう接したらいいのかわからなくて悩むオヤジの姿に萌えるし。オヤジBL自体が、これまで男同士の恋愛なんて考えもしなかったオッサンが、BL的恋愛に巻き込まれていく葛藤とか躊躇いとか戸惑いとかが結構な萌えポイントのひとつとしてあるわけだけど、これが子持ちオヤジならその度合いはさらにグッと高まるわけですよ!

…とはいえ、この『息子がお世話になってます!』はコメディ色が強い作品なので、その辺の葛藤は薄いんだけど(お父さんも30歳くらいなので別にオヤジというわけではないし)。でも、逆に、1回成り行きでエッチしちゃってからのお父さんの色ボケっぷりが、最初のエリートぶりとの落差が物凄くて笑えた。先生にいつ襲われても大丈夫なように、幼稚園に息子を迎えに行くにもおろしたてのパンツをはいたりして準備万端で待ち受けちゃう! 読みながら「ヤル気まんまんじゃねえか!」と声に出してツッコんじゃったよ。

お父さんは可愛いし、もちろん息子も愛らしいし、笑えてかつほのぼのとした家族愛も感じられて、良い話だった。描き下ろし番外編も24ページもあって、お得感たっぷり。同時発売のエッセイ漫画『正直売れたい。』もかなりの描き下ろしがあったので、作者はかなり大変だったろうなぁ(コミックス描き下ろしって原稿料出ないらしいし…)。そんな頑張ってる“正直売れたい”天城れのを、これからは微力ながら応援していこうかな、なんて思ったり。(個人的には、作品によって当たり外れが結構あると感じるので、すごく好きな作家さんというわけにはいきませんけど)


◆『童貞先生!』の感想はこちら

『此処彼処』川上弘美

(新潮文庫)

具体的な地名を挙げて、そこにまつわる思い出をつづるエッセイ集。

著者のこれまでのエッセイでも、子供の頃の思い出や、若い頃にあった出来事が書かれていたことは当然あったけれど、それらは皆、どこか夢の中の出来事のようだった。私のイメージの中の川上弘美は、模糊としていて、それこそ彼女の小説に登場する不思議な生き物(あるいは生き物ではない何か)達と同じようにしか、捉えられなかった(テレビ出演している姿を見たことがあるのにもかかわらず!)。

それが、この『此処彼処』では、固有名詞を挙げているからというわけでもないだろうが、著者の生活、人生が現実感を持って感じられた。子供の頃のアメリカ暮らし、病気の話、かつて付き合った男の子達、新婚旅行……これまでにも同じようなことは語られていたけれど、これまでよりも具体的に語られていると感じた。特に、人付き合いのままならなさにくよくよしたり、お説教されるのがいやだと感じたりする文章に、これまでになく著者を身近に感じた。

彼女の小説(特に短編小説)の、ふわふわとした、現実からの奇妙な浮遊感がとてもとても好きなのだけど、今回は初めて「川上弘美」の確かな輪郭を捉えることができたような気がして、これはこれでたいへん楽しく読んだ。いつもと少し違う感じ、という点をここまで書いてきたが、読み心地の良いやさしい文体はいつも通りで、彼女のエッセイを読んでいると心に余裕が生まれてくるのだった。

『グルメよこんにちは』小川彌生

(花とゆめコミックススペシャル/白泉社)

レストラン食べ歩きルポ漫画。著者と編集者が、都内にある各国の料理専門店を訪れて、その国の料理を食べて紹介する。第1回がチュニジア料理、第2回が中国の雲南料理…という具合。

東京にあるレストランに、事前に取材許可をとっておいて食べに行っているのだから、当然だけど、特に面白い出来事(ハプニング)が起こるでもなく、それほどゲテモノが出てくるでもなく、漫画としての面白さはそこそこといったところ。でも、食べ物の絵は綺麗だし、お店の人にお話を聞きながら食べる形なので、料理やお国柄についての丁寧な説明があって、なかなか興味深く読めた。

また、訪れたレストランの所在地、営業時間、アクセスなどの情報も載っているので、東京在住の人には参考になりそう。加えて、本編とは別に、その国についての簡単な解説ページもあって、それも楽しく読んだ。お国ごとに色々な習慣、食生活があって面白い。できれば、国の場所は文章だけじゃなくて地図で示してあればもっとわかりやすかったのになぁ、と、地理オンチの私は思うのだった。

いやー、それにしても、「東京では世界中の料理を食べることができる」と、何かで聞いたことがあるけれど、本当にそうだな! 私も東京に住んでいたら、珍しい異国料理を食べに行くのになぁ。特に、オーストラリア料理のワニのグリルには心惹かれた。ワニの脂身美味しそう〜(脂身好きなのです、私)。あと、毎回同行している編集者さんが酒好きなこともあって、料理とともにお酒の紹介も結構あって、美味しそうだった。

レストランに行って食事をするだけの漫画なんだけど、きちんと見てイメージの湧く絵と、具体的な味の感想が述べられているので、どういう料理なのか想像しながら楽しむことができた。何より著者も編集者も健啖家で、美味しそうに食べているのが伝わってきて良かった。


【関連記事】
手越原徹『男の料理!』の感想
(ギャグコメディ漫画ですが、珍しい外国の料理のレシピなどが載っています)

『花狂ひ』下村富美

(小池書院)

着飾った狐面の少女のイラストに惹かれて表紙買い。1993年から2002年にかけて、小学館のプチフラワー、ビッグコミックSPECIAL増刊に掲載された作品を6篇収録した短編集。伝奇漫画というのかな。

最初に収録されている作品のタイトルが『反魂』。絵柄の雰囲気もあって、悲しい、おどろおどろしい…そんな物語を想像していたが、意外に可笑しい内容だった。カバーの折り返しに「ブラックユーモアてんこもりの下村ワールド」と書いてあったが、なるほどと思う。骨とはいえ心あるものとして甦ったのは、さすが西行というところか。自分は失敗したのにね(笑) 死んで後に、求めた友をようやく得られたということなのかなぁ。

『反魂』も他の作品も、骨や生首や鬼や河童が、畏れられ、あるいは笑われながら、人にかかわる様は、子供の頃に読んだ『日本の民話』という民話集を思い出させた。昔の日本では、こういう話が身近に伝えられていたのだろうな。生と死が隣り合わせどころか、生も死も混沌と混じり合った世界。こんな不思議の満ちた世界に、昔の人達は生きていたのだろうか(個人の持つ世界観、死生観、宗教観という意味で)。

それにしても、こんな渋い作品を掲載していたとは、さすがプチフラワー(『反魂』はビッグコミックSPECIAL増刊掲載だけど)。小学館の少女漫画というと、まず少女コミックが思い浮かぶけど、こちらの系統も、今もflowersや凜花に受け継がれて、一風変わった少女漫画の佳作を生み出し続けているのだなぁ。

ところで、この作者のことは全然知らないでこのコミックスを買ったのだけど、どうも見覚えのある絵柄だな、と思ったら、この人が挿絵を描いているキャンバス文庫の小説を持っていた。絵を見てパッと思い出せる辺り、それだけ印象深い、力のある絵を描く作家だということだろうな。

2009年8月に買った本

200909012115000.jpg
8月に買った漫画その他の記録。画像は8月に買った漫画で手近な床に積んであったものです。リンクは感想記事です。
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