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  • 2012.10.01 Monday
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一定期間更新がないため広告を表示しています


金星特急が出発する日

『金星特急5巻』を、買ってからずーっと積ん読にしていて、やっと読み終わりました。読み始めればぐいぐい引き込まれてあっという間に読了してしまうんだけど、文章が読めない期間がちょくちょくやってくるたちなんで仕方ない…。

ところで6巻は来月、6月7日に出るみたいだけど、これは金星特急発車の翌日に当たる日ですね!
作中で6月6日に金星の日面通過があって、前回は8年前、次回は105年後、今回の通過終了時刻が日本時間13時49分、と書かれていることから、作中は2012年だと思って読んでいます。

もちろん現実の2012年とは違う世界だけど…この違いって、200年前に言語の大虐殺があったことによる違いなんだろうか? 1812年頃に世界の言語が統一されていたとしたら…というif世界。

でも2巻で『失われた地平線』が出版されたばかり、と言われてたのはどういうことなんだろう?
はじめは、英語から世界語に翻訳したり、内容を検閲したりするのに時間がかかって、出版が遅れたのかと思ったけど、でも実際に『失われた地平線』が発表されたのって1933年だから、私の推測(作中が2012年で1812年頃から言語が統一された)が正しければ、そのときにはもう世界語が使われているはずだし、79年も出版が遅れるのもおかしいし。作中は2012年だけど、1933年頃のような世界情勢や文化程度なんですよ、ということなのかなぁ?
もしかして、長らく絶版になっていた『失われた地平線』の邦訳が、2011年に河出文庫から新訳版が出たんで、そのことを作中では「出版されたばかり」ということにしてしまう、一種の〈遊び〉なのかなぁ?

『二年間の休暇』作:J.ベルヌ/訳:朝倉剛

(福音館古典童話シリーズ1/福音館書店)

『十五少年漂流記』の完訳版。福音館古典童話シリーズは、有名な海外児童文学作品(必ずしも児童文学ではないけど)を完訳で出しているレーベル。私が通っていた小学校の図書室にはこのシリーズがずらりとそろっていて、今よりもよほど読書家だった私はこれらの分厚い本をよく借りて読んでいた。中でもお気に入りが『ハイジ』と『秘密の花園』、そしてこの『二年間の休暇』だった。

単に物語自体の面白さもあったし、子供ながらに長編作品を読破したという満足感もあって(二年間の休暇は本編525ページ)、忘れがたい読書体験だった。で、いつかまた読みたいなぁ、とぼんやり頭の奥の方で思っていた。そうしたら、なんと7月にモモグレから『十五少年漂流記』のドラマCDが出るじゃないか…! というわけで、十五少年熱がにわかに盛り上がってきて、気付いたら懐かしいあの『二年間の休暇』を古本で購入していました…。

20年は言い過ぎとしても、十数年ぶりに読む『二年間の休暇』は、懐かしくもあり新鮮でもあり。子供の頃に読んで抱いていたイメージとややズレを感じる部分があって、自分の感じ方の変化や理解力の向上が実感された。
一番印象が違ったのがドニファン。子供の頃はドニファンってジャイアンだと思ってたんだけど、今読んだらどっちかというとベジータだった(ブリアンが悟空でゴードンがピッコロ…バクスターがブルマ、サービスがヤムチャ辺り?)。

子供の頃の私は、生意気にもブリアンがあまり好きではなくて、ゴードンの方がリーダーにふさわしいし格好いい、と思っていた。ブリアンは出来すぎていて親しみにくかったのだ。じゃあ彼に対抗していたドニファンを支持していたかというとそうでもなく。ドニファンはドニファンで、ワガママで和を乱す困った奴ととらえていた。

改めて読んでも、ブリアンにはやはり親近感が抱きにくかった。出来すぎ、というよりは、地の文で持ち上げられすぎてて…作者にえこひいきされてる感じがしてどうも…。やっぱりフランス人だから仕方ないのかしら。
でもドニファンはなんだか好きになった(笑) 彼の気位の高さもかわいいというか。大人の目で見ると、子供のワガママなんて微笑ましいものというか。いわゆるツンデレというか。

ブリアンがドニファンを助けるところも良かったけど、ドニファンがブリアンをかばったとこなんて読んでてによによしてしょーがなかった。これが音声ドラマ化するのかと思うと(笑)
いやもう、今となっては頭の中が腐っちゃって、幼かった自分には戻れないことをひしひしと実感した。ドラマCDでは、ドニファンをただの悪ガキには絶対にしないでほしいなー。すごく優秀で、貴族的で、それゆえにプライドの高い彼のキャラクターをきちんと描いてほしい!
あと、ジャックがブリアンにキスをするところはぜひ感動的に描いてほしいですー。あれは良い場面だった(腐的な意味を除いても)。外国らしい大仰さもあるんだけど、兄弟愛は万国共通かなー。

冒険物、無人島暮らしの面白さももちろんあるんだけど、今読むと人間関係とか集団生活の中のいざこざみたいなものがすごく面白かった。

もうひとつには、子供達がガンガン動物を殺してさばいて食べたり脂をとったりしているのが、状況がそうさせたということもあるだろうけど、やっぱり時代の違いなんだろうなー、と思って興味深い点だった。それは、慣れとかの問題じゃなくて、意識の違いなんだろうな、と。今は動物を殺すことってすごく悪いこととしてとらえられてるところがあるから、生きるためには殺して食べなきゃ仕方ない状況になったとしても、なかなかああはいかないんじゃないかな。とくに動物愛護の進んでいる国の人だと。

完訳版はぜひとも大人にも読んでほしいです。福音館古典童話シリーズは分厚くて重たい本だけど、同じ内容で手軽な文庫版も出てます。抄訳はいろんな出版社から出てますが、どうせ読むなら完訳で!

『さよならペンギン』大西科学

(ハヤカワ文庫JA/早川書房)

久々の感想! でも漫画じゃなくて小説。
多世界解釈で、オッサンと幼女の組み合わせで、そのうえペンギン…ということで、たいそう好みの設定。しかも、これまでラノベレーベルで書いてきた大西科学の初の一般向け作品ということで、期待して読み始めた。

最初の頃の、飄々とした南部観一郎のキャラクターに好感を持った。こういうつかみどころのないキャラ好き。しかも教師(正確には塾講師)でこれはイイ! と思ったんだけど、これは彼の素の性格ではないことが早々に明かされるので、その点ちょっと残念に感じた。でも、南部にしてもペンギンにしても、キャラクターは良かった。生意気幼女かわいい。

ただ、バトル展開だったのが意外だったし、残念だった。せっかくラノベじゃないんだから、もうガッツリしっとり渋い感じでやってほしかったし、設定からしてそっち系だと思ってたし。まあ、私が勝手に期待してただけなんだけど。でもオッサン主人公なのは一般ならではかも。
次回作はぜひ非バトル系の渋いのを読みたいなー。『さよならペンギン』の続編でも良いかも。なんか続きそうな終わり方だったし。


ところで、なんだかまた体調がおかしくて、喉が痛くて鼻が詰まり気味で耳の奥が変な感じで微熱があって鈍い頭痛がする…。ちゃんと抗生剤飲んで治ったと思ってたんだけど、ぶり返してきたのかも…。というわけで、なかなか更新本格再開なりませんが、寝込まなければ頑張って更新していきたいなーと思ってます。(でも寝込む可能性高いです…)


◆『晴れた空にくじら3 浮鯨のいる空で』の感想はこちら
◆『晴れた空にくじら 浮船乗りと少女』の感想はこちら

『晴れた空にくじら3 浮鯨のいる空で』大西科学

(GA文庫/ソフトバンククリエイティブ)

浮鯨のいる世界で、戦争に巻き込まれていく浮船乗り達のシリーズ最終巻。

序章の「浮鯨」からググッと持っていかれた。大西科学の描く滅びの情景は、哀しく、穏やかで、うつくしい。この達観した感じ、全体に漂う冷静さが、心地良い。

本編は、いままでよりシリアスな雰囲気だったかな。雪平も格好良く見えた…時々(笑) 実際の戦争からかなりネタをとっているみたいだけど、自分がその手の知識が全くないのが残念だ。元ネタがわかっていればもっと楽しんで読めるのに…。でも、その辺りの知識はなくても、問題なく面白く読めたけれども。特に峰越とヴァローナとの1対1の決戦は読み応えがあった。この辺りは、理屈っぽい作風が良い方に働いていて、非常に緊迫感がある(個人的には、大西科学の理屈っぽさを元々愛しているけれども)。いや、もう、途中からドミトリィエフ少尉に萌えながら読んでたので、彼が倒れたときにはすごくショックで、クニちゃんが頑張っている間も、正直言って少尉のことが気になって仕方なかった。

ああ、この作品は本当に映像で見てみたいなぁ。作中の文章を忠実に表したデザインで。植物のような浮鯨達、ガタイの良い浮船乗りの青年達、可憐な、けれど凄腕の浮鯨撃ちの少女。青い空の、ずっとずっと高いところにいる浮鯨達と、ずっとずっと低いところで火花を散らしている人間達との、対比というか、スケールの違いが、鮮やかに浮かび上がるだろうなぁ。

これで『晴れた空にくじら』シリーズは終わっちゃったけど、大西科学の新作を楽しみに待つことにしよう。ラノベももちろん良いのだけど、一般向けで何か書いても面白いんじゃないかなー。


◆『晴れた空にくじら 浮船乗りと少女』の感想はこちら

『此処彼処』川上弘美

(新潮文庫)

具体的な地名を挙げて、そこにまつわる思い出をつづるエッセイ集。

著者のこれまでのエッセイでも、子供の頃の思い出や、若い頃にあった出来事が書かれていたことは当然あったけれど、それらは皆、どこか夢の中の出来事のようだった。私のイメージの中の川上弘美は、模糊としていて、それこそ彼女の小説に登場する不思議な生き物(あるいは生き物ではない何か)達と同じようにしか、捉えられなかった(テレビ出演している姿を見たことがあるのにもかかわらず!)。

それが、この『此処彼処』では、固有名詞を挙げているからというわけでもないだろうが、著者の生活、人生が現実感を持って感じられた。子供の頃のアメリカ暮らし、病気の話、かつて付き合った男の子達、新婚旅行……これまでにも同じようなことは語られていたけれど、これまでよりも具体的に語られていると感じた。特に、人付き合いのままならなさにくよくよしたり、お説教されるのがいやだと感じたりする文章に、これまでになく著者を身近に感じた。

彼女の小説(特に短編小説)の、ふわふわとした、現実からの奇妙な浮遊感がとてもとても好きなのだけど、今回は初めて「川上弘美」の確かな輪郭を捉えることができたような気がして、これはこれでたいへん楽しく読んだ。いつもと少し違う感じ、という点をここまで書いてきたが、読み心地の良いやさしい文体はいつも通りで、彼女のエッセイを読んでいると心に余裕が生まれてくるのだった。

『酔っぱらったらものにしろ』樹生かなめ

酔っぱらったらものにしろ
樹生かなめ
(SHY NOVELS/大洋図書)

BL小説でございます。同期入社の美形リーマン同士でございます。
『やれる時にやっておけ』と似た感じのタイトルですが、全然関係ない新作です。あとがきにタイトル案がいくつか書かれていましたが、私としては『俺は酔っていない』『酔ってないけど、酔っている』辺りが好みです…いや、それで売れるかどうかはおいといて。

実は両想いの2人が、お互い想いを隠したまま親友として振る舞うという、樹生かなめ作品には少々珍しいタイプの話。いやあ、相手の都合なんてお構い無しで「好きだー」と押しまくってくるキャラが結構多いイメージなもので…。その手の強引キャラとは違うものの、主人公の野々村は下戸の酒乱で、酒の力を借りて想い人の伍代に「俺と結婚しろ」と迫りまくるのであった……て、あれ? やっぱりお馴染みのパターン? いやいや、全部酒のせいにしてあくまで本心は隠し通そうとする野々村はなかなか健気で可愛らしかったですよ。

以下ネタバレです。
続きを読む >>

フーバニア国異聞 縞田理理

フーバニア国異聞 水の国の賢者と鉄の国の探索者
縞田理理
(C★NOVELSファンタジア/中央公論新社)

がっつりネタバレ感想ですので、お気をつけくださいませ。



わぁー、フーバニアに行ってみたい! 虫蜜を煮詰めた飴、ミズイモのパンケーキ、ミルクノキの樹液で作ったバター、《切り裂き喉の木》の酒…皆素朴で美味しそうだ。食べ物だけじゃなくて、固有の動物や植物がとても面白い。中でも、輝芯草の光に照らされた一面のシネイ草が風に揺れる様は本当に幻想的で、澄んだ葉擦れの音が聞こえてくるようだった。叶わないことだけれど、この光景だけでも実際に見てみたいなぁ、と強く思わされた。それから、密生する巨大茸の森も、ぜひ見てみたい。そのためなら、死ぬほど不味い薬湯だって鼻をつまんで飲んでみせるから。
他にも、巨大な鳥や蜂やトンボやザリガニ、オウム貝のようなものまで! 狂暴で恐ろしい生物も多いけど、それでも読んでいてワクワクさせられる。何より、作者がこういう珍獣や怪植物が好きなのだろうと感じられて、嬉しくなる。

お話は綺麗にまとまってて読後感もさわやか。すべて良い方におさまって、少々出来すぎな気もするくらいだ。国も王も兄弟も。ドワイトがエラードを庇って勲章を踏みにじった場面には感動してしまった。

世界はナニモノかの見ている夢で出来ている、というのは何かの本でも似たような物語を読んだことがある。星新一だったかな。何か元ネタがあるのかしら。神話とか昔話とか。夢の世界って素敵だな、出鱈目で、自由で。

全体的になんだか児童書のような雰囲気で、楽しくて読みやすかった。

あたし彼女 kiki

第3回日本ケータイ小説大賞受賞作。

初めてケータイ小説を読みました! 恋空も赤い糸も読んでないんだけど、日参している雑文サイトで『あたし彼女』がネタにされていたので、どんなものなのか読んでみようと思いまして…。2日がかりで読み通したけど、ちょっと疲れました(笑) 紙の本でならあっという間に読み終わりそうだけど、ケータイで1ページずつ読むのがめんどくさくて堪らなかった。

お話は思ったより悪くなかった。でもヒロインのアキにも、相手役のトモにもあんまり魅力を感じなかったけど…。アキは自己中でバカだし、トモも基本的に自分のことしか考えてないし。2人とも好きだなんだと言ってるわりに互いの話を全然聞かないし、自分の思うことを相手に伝えようともしないのが、理解できなかった。それとも世の恋人同士ってのはこんなものなのかしら。
実は、読みながら、改心したアキがトモと良い感じになったとこでまた昔の男絡みで刺されるんじゃないか…なんて予想してたんだけど、ハズレたなぁ。いやぁ、ケータイ小説ってよく知らないんだけど、やたら人死にするイメージがあったもんで…。でも、この予想がハズレたのは却って好印象でした。正直、人死にで安易に盛り上げるのがこういうケータイ小説の常套なんだろうと思っていたので。人死にという点では、流産するけれど、あれはこれまでの中絶のことなんかを考えるとアキの自業自得だよなー、と自然に納得できる感じだったので、悪い展開じゃなかった。アキ自身も反省しているし。


独特の文体、体裁については、ケータイ小説ってのはこういうものなんだろうという理解で読んだので、あれが悪いとは思わなかった。ちょっと神戸あやか(花井愛子)の少女小説を思い出した。若者言葉の一人称文体で、バシバシ改行しててページの下半分は真っ白!という。昔、神戸あやかのKAORIシリーズを姉が持ってて、私も借りて読んでたんだけど、けっこう好きでした。そりゃ、『あたし彼女』の方はプロの作家と違って、若者言葉じゃなく単なる間違いだろうという箇所もけっこうあったので、それは気になった。


全体的な印象としては、若い人の恋愛ブログに似ているな、ということと、少女漫画のモノローグをそのまんま文章にしたみたいだな、ということ。
個人的な好みとしては、わざわざ読みたいか、と言われると「否」なんだけど、体裁がこれまでの小説と違うから、という理由だけで批判することはないだろうと思う。ケータイでちょっとずつ更新されるのを読むのが1番読みやすいし、そういう読み方に向いた文章なんだろうと思う。
「ケータイ小説」という名称だから、小説らしくないことが気になるんじゃないかなぁ。もちろん、普通の小説をケータイで発表している人もたくさんいるでしょうから、そういうのは「ケータイ小説」と呼んで、『あたし彼女』みたいな恋愛ブログ的なものは別の呼称にすればいいんじゃないかしら。「ケータイストーリー」とか? 「ケータイコイバナ」とか? いやー、なんか、私のセンスでは思いつかないけど(笑)

紺碧のサリフィーラ 天堂里砂

紺碧のサリフィーラ
天堂里砂
(C★NOVELSファンタジア/中央公論新社)

第4回C★NOVELS大賞特別賞受賞作。

書き出しは人物や情景の描写もわかりやすく、文章のリズムも良かったが、後半は文章が練れていないように感じた。長いセンテンスのときに、語順や句読点の位置が悪く、読みづらさを感じた。文体自体は嫌いではないので、もう少し推敲を丁寧にしてあればなぁ、と惜しく思った。

周囲の人物が皆優しいので、サリフが内罰的に過ぎるように感じられて、その分主人公としての魅力が減じてしまっていたように思う。受身で後ろ向きであるように感じられるのだ。実際には行動し決断しているのだから受身ではないのだけど、彼の家族やワディムがとても優しい分、彼の決断が引き立たない感じ。

決断といえば、第三章でサリフが父兄に別れを告げる場面は、本来なら心動かされる場面であるのに、説明過多のために、読んでいて却ってさめてしまった。サリフが家族を思いやって嘘をついたことは、まずサリフ視点で書かれているのだから、父兄視点の部分では、その嘘に気付いていたことだけを書けば良い。サリフが家族のために辛い嘘をついたのだ、と改めて説明されると、くだくだしく感じてしまう。

同じように、くどく感じた箇所がもうひとつある。第五章で明かされる、シェインが沈んだときの真相だ。まずイェンファの口から語られ、その後202ページ下段で、サリフの幼少時の記憶として書かれ、次に203ページ下段で、「すべて思いだした。」という一文とともにまた同じ説明が繰り返される。1度目はタネ明かし、2度目は「本当は心の奥で覚えていて、罪悪感を抱いていた」ということの説明、3度目は「海神は罰を与えたのか救いを与えたのか」という文章のために、それぞれ書かれたのだろうが、同じ内容を繰り返し書かずとも、もっとスマートな書きようはあっただろうと思う。

どちらの場面も、読み手の感動を誘う箇所であるだけに、もったいない。盛り上げようとして力を入れすぎたのかもしれない。


作品自体は、好みに合わないとか全く面白くないとかいうことはないので、全体の印象としては、惜しいなぁ、という感じ。嫌いな内容ではない分、余計に先に挙げたような点が気になってしまった。

晴れた空にくじら 浮船乗りと少女 大西科学

晴れた空にくじら 浮船乗りと少女
大西科学
(GA文庫/ソフトバンククリエイティブ)

設定好きの私の心をたっぷり満たしてくれる素敵小説でした。これを映像にしたら映えるだろうなぁ。単に個人的に「この世界を目の当たりにしてみたい」という欲求を刺激されたんです…どうでしょ、ジブリ辺りで映像化したら素敵そうじゃないですか。浮鯨の腑分の描写なんて、幼い雪平と一緒になってドキドキさせられた。

ジョン平シリーズに比べると華がある印象を受けた。ドンパチで窮地に追い詰められるスリルとスピード感があるし(ジョン平にもあったけど)、あとは女の子との絡みが増量されてるのかな。ありがとうセーラー服(しかもこの場合は美少女が男物の服装をしているんだ、と思うといっそう味わいがありますな)。クニはもちろん、林さんも可愛らしかった。でも、ボーイ・ミーツ・ガールストーリーというには、雪平はちと歳がいってるんじゃないかね。あれ?何歳くらいなんだろ、彼。私は30歳前後の筋骨逞しい青年を思い浮かべつつ読んでたんだけども。いやぁ、いいよね、気は優しくて力持ち。

物語はスケールアップした印象だけど、正確でこまごまとした描写は相変わらずで、大西科学らしいなぁ、と嬉しくなってしまう。バールのようなもの、だとか、あと他にもチマチマと、いくつかニヤリとさせられた。個人的にはちくわぶの件りにおおいに共感した(笑) 私も最近まであれが「ぶ」が主であると知らなかったもの。

戦史にちっとも詳しくないので、この辺の知識があればもっとニヤニヤ出来たのかもしれない、と思う。なにせ、読み終える頃になってようやく東郷平八郎に思い至ったというレベルなもので…。

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